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【 精神栄養学 】

【目次】

◆性格とホルモン
◆人の性格は何で決まるか
◆眠りのホルモン
◆男性と女性の違い
◆心と栄養素
◆脳の病気
◆脳の働き
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◆ 
◆ 
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◆食べ物と性格
◆セロトニンとは
◆麻薬と人類
◆香りが心に作用する
◆夢の解釈
◆天国と地獄
◆ 
◆ 

◆ 

◆ 






◆  性格とホルモン

 人間の体内には約20種類のアミノ酸が存在しますが、そのうちベンゼン環を持つのはフェニルアラニンとチロシンだけです。フェニルアラニンはベンゼン環だけを持っており、そのベンゼン環に水酸基が1つ付いたのがチロシンです。チロシンは、フェニルアラニンから肝臓で作られ、このチロシンが酵素によって酸化されると水酸基が1つ増えてドーパというアミノ酸になります。そのドーパが酵素によってさらに分解され、カルボキシル基が脱落するとアミンに変化。ドーパのアミンなので"ドーパミン"と呼ばれます。このドーパミンにさらに水酸基が結合したものがノルアドレナリン、ノルアドレナリンにメチル基が付いたのがアドレナリンです。
 1975年、イギリス・アバディーン大学のジョン・ヒュージらによって、麻薬のモルヒネと同じ鎮痛・快感作用を持つ物質が脳内から発見され、"脳内麻薬"と名付けられました。中でも最も知られているのが、モルヒネの10倍もの作用を持つというβエンドルフィン(ハリ麻酔の時に分泌されることが証明されている)です。モルヒネもβエンドルフィンもその構造部分にチロシンが存在します。
 人がストレスを受けると、脳下垂体を中心にPOMC(プロオピオメラノコルチン)というたんぱく質が合成されます。POMCは酵素により分解されて、βエンドルフィン、ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)、副腎皮質増殖因子といったペプチドホルモンが生成されます。その結果、副腎からは副腎髄質ホルモン(カテコールアミン)と副腎皮質ホルモン(コルチゾールなど)が分泌。また間脳の橋の青斑核にあるノルアドレナリン神経からはノルアドレナリンが、交換神経末端からはアドレナリンが分泌されます。

 1964年のこと。神経伝達物質を蛍光体に変えるという蛍光現象を応用した実験法によって、脳幹に左右対称に4列並んだ神経核が発見され、外側2列をA系神経、内側2列をB系神経と名付けられました。A・B神経系は、脳幹を出発点とする神経で、A系神経は「脳を覚醒して快感を生む神経」であり、B系神経は「A系の活動を抑える抑制神経」であることが知られています。A系列の下から6番目の神経をA6神経と呼び、その神経核は脳幹の橋という部分に存在し、米粒の半分ほどの大きさ。青黒い色をしているので「青斑核」と呼ばれ、A9神経核はもっと青黒い色をしているため「黒質」と呼ばれています。

(ノルアドレナリン)
 さぁ戦おう、仕事をしよう、運動しよう……という時に多量に分泌されるのが、ノルアドレナリン。朝はノルアドレナリンの分泌で目覚め、昼はノルアドレナリンの分泌によって活動し、夜は分泌が低下することにより眠る……、といった覚醒時や怒りを感じた時に分泌されます。ノルアドレナリンは、A系列の1〜7神経の神経伝達物質ですが、特にA6神経から多く分泌されます。動物実験で、サルの青斑核を電気刺激すると不安・恐怖状態になることが知られています。このため、ノルアドレナリンの多量分泌がパニック発作の誘引になるのでは、と言われています。逆にノルアドレナリンの分泌が低下すれば、抑うつ状態に陥ります。
 西アフリカの熱帯林に自生するヨヒンベは、ノルアドレナリン神経の受容体に作用します。受容体には、ノルアドレナリンを受け取り情報を感じ取るβ受容体と、放出したノルアドレナリンを神経細胞自身が感じ取り放出量をコントロールするα2受容体があります。ヨヒンベはα2受容体の働きを阻害する作用がありますので、コントロールが効かなくなって過剰生産が起こり、パニック障害に似た症状をもたらします。

(アドレナリン)
 脳内では、アドレナリンとノルアドレナリンが混じって分泌されますが、驚いた時や怖い時に多く分泌される特徴があります。アドレナリンは、A系神経の下部にあるC系神経で働く神経伝達物質であり、また副腎髄質から分泌されるものは、副腎髄質ホルモンとして血中に放出されます。血中に放出されたアドレナリンは、ブドウ糖量を増加させて活動の準備に備えます。

(ドーパミン)
 ドーパミンは、A系列の8〜16神経で分泌されますが、特にA10神経から多く分泌され「快感」をもたらします。いわばドーパミンは、「人間が自ら脳内で作り出す覚醒剤」ともいえるもので、統合失調症患者の大脳基底核にあるドーパミンレセプターが、健常者の2倍も多かったという報告があります。そこで統合失調症の原因は「ドーパミンの過剰分泌だ」とする"ドーパミン仮説"が誕生しました。
 ドーパミンを還元し、水酸基を2個取り去ると脂溶性となるため、血液−脳関門を容易に通過して脳内に入れるようになります。これが覚せい剤で、アンフェタミンはノルアドレナリン、メタンフェタミン(ヒロポン)はアドレナリンと構造がよく似ています。また喘息の治療薬エフェドリンもアドレナリンの構造に似た物質です。
 麻薬はケシの実から作られますが、そこから出る白い乳汁を乾燥させて粉末にしたものがアヘン、このアヘンをさらに精製したものがモルヒネで、脳内麻薬であるエンドルフィンに化学構造が似ています。天然物であるモルヒネは、脳内へ2%しか入れませんが、モルヒネに酢酸を2分子付加するとヘロインとなり、脳へ65%も入ることが可能となるため、容易に依存症に陥ります。
 統合失調症の治療薬でもあるハロペリドールなどのブチロフェノン誘導体は、ドーパミンのレセプターへの結合を阻害することでドーパミンの過剰を抑え、幻覚、妄想などの症状に効果をもたらします。またクロルプロマジンといったフェノチアジン誘導体は、主にノルアドレナリンレセプターに作用して、不安感などを取り除きます。両者は、メジャートランキライザーとも呼ばれています。
 パーキンソン病は、A9神経のドーパミン減少によって起こるとされ、治療薬としてドーパミンの前駆物質であるLドーパが使われています。反対にA9神経におけるドーパミンの過剰は、舞踏病を引き起こす原因となります。
 1957年、スイスのある学者がクロルプロマジンに似ているイミプラミンをうつ病の患者に使用したところ、うつ病が改善されたことを発見しました。これを契機に2つのベンゼン環の間に環状構造をもう1つ持つ三環系抗うつ剤が、次々と開発されました。イミプラミンの作用は、カテコールアミンを再吸収するトランスポーターに結合し、ドーパミンやノルアドレナリンの再吸収を阻害してうつ病を改善します。
 うつ病の薬には、「MAO阻害剤」と呼ばれるものもあります。MAOとは「モノアミン酸化酵素」の略語で、カテコールアミンを分解する酵素ですが、この酵素の働きを阻害するのがMAO阻害剤です。

(セロトニン)
 脳内には、A系神経から分泌されるカテコールアミンの過剰を抑制する神経があり、B系神経と呼ばれています。セロトニンは、このB系神経の神経伝達物質であり、アミノ酸のトリプトファンから体内で合成されます。まずトリプトファンが酸化され、水酸基が付加して5-HTPというアミノ酸に変化。さらに分解されてカルボキシル基が逸脱してセロトニンとなります。ベンゼン環が2個つながったような部分を"インドール環"と呼び、環内に窒素原子を1個持っています。
 中脳と延髄の間にある縫線核を源とするセロトニン神経は、青斑核に直接神経線維を送りノルアドレナリンの活性を抑制する働きがあります。強迫神経症に使われるクロミプラミンやプロザックに代表されるSSRIは、シナプスへ放出されたセロトニンが再び神経末端に取り込まれるのを阻害する薬です。

(ギャバ)
 GABAは、大脳皮質や小脳、海馬、脳幹部にある抑制系の神経伝達物質です。グルタミン酸が「オン」に作用するのに対し、GABAはシナプスにおいて「オフ」に働き、標的細胞の活動を抑制します。
 抗不安剤として知られるものにベンゾジアゼピン誘導体があります。これは窒素原子を2個含んだ七員環という構造をしており、GABAレセプターに結合することでGABAの活動を高めて鎮静、催眠、抗不安などをもたらします。また睡眠薬として知られるバルビツール酸誘導体もGABAの活動を高めることで催眠を誘導します。なおアルコールにも似た様な作用があり、不安感を取り除きます。
 てんかんの原因は、GABA神経の抑制不足によって起こり「抑制が外れた大脳新皮質が異常放電し、発作を起こすのではないか」という説があります。まったく新しい未経験の風景を「すでに見たことがある」と感じることを"デジャ・ヴ"といいますが、この現象はてんかんと同じく、大脳皮質の側頭葉の放電によって起こることが確認されています。

(アセチルコリン)
 アセチルコリンは、ビタミンBと酢酸が結合した化合物であり、酵素によってアセチルとコリンに分解されます。大脳辺縁系にある側坐核では、有髄・無髄神経の間にアセチルコリンが作動する神経が働いています。近年、大脳基底核から前頭連合野へ向かうアセチルコリン神経の脱落が「アルツハイマー病」の原因であり、神経の脱落は"アミロイドベータ"が影響しているのではないかという説があります。


◆  食べ物と性格

<魚の摂取とうつ病>
 中国・大連医科大学の研究では、自殺未遂で大連の病院へ運び込まれた100名の患者と、故意ではない事故で怪我をした患者100名を混合し、血液中のEPA濃度が高い順に50名ずつに区切って4つのグループに分けた。その結果、自殺未遂者の占める割合は、EPA濃度が最も低いグループでは74%に達していたのに対して、EPA濃度が最も高いグループでは26%しかいなかった。このことから、魚(EPAを含む)の摂取量が少ないと自殺未遂を起こしやすくなることが推測された。その理由として、EPAの血中濃度が低いとセロトニン作動性ニューロンを活性化できなくなり、衝動性の亢進やうつ病が起こりやすくなると推測される。
 魚の摂取は、血液中のEPA濃度を高め、うつ病や自殺未遂を防ぐ効果があると言われています。しかし、「魚の摂取が昔から多い日本人は、なぜ自殺者が多いのか」という問題です。これは、専門家の間では"ジャパニーズパラドックス"とも言われています。その理由としてまず考えられるのは、脳内ホルモン(神経伝達物質)であるセロトニンの分泌量には遺伝的な要因もあり、日本人は「セロトニンの分泌量が少ない民族」であるからだろう、という推論です。では日本人のうち、どのくらいの人がセロトニン分泌量が少ない傾向にあるかというと約65%、つまり3人に2人は自殺しやすい遺伝子を持っているということ。一方、アメリカ人の場合は18%とわずか5人に1人です。アメリカ人がどちらかというと楽観主義的なのは、脳内セロトニン分泌量が豊富だからかもしれません。
 魚の摂取以外にセロトニン分泌を高めるにはどうしたらよいのでしょうか。まず朝は早起きして、太陽の光を十分に浴びることです。目の網膜に入った光の信号は、縫線核にあるセロトニン神経に刺激を与えて分泌を高める同時に「体内時計を調節する働き」を担っています。セロトニン神経の活性化には、太陽の光の10分の1、つまり3千ルクス以上は必要ですから、400ルクス程度の蛍光灯の光ではぜんぜん足りません。朝起きたらば、カーテンを開けて太陽の日差しを浴びましょう。できれば、散歩に出かけ、30分も歩けば十分です。
 セロトニン神経は、座禅や瞑想によっても活性化されます。よくスポーツ選手などで、試合前に部屋にこもって座禅や瞑想を行う人がいますが、腹式呼吸をすることでセロトニン分泌が高まりやすくなります。また野球の試合中、ガムをクチャクチャ噛んでいる選手がいますが、よく噛むことによってもセロトニン分泌が高まり、緊張を解きほぐしてリラックス効果をもたらします。

<DHAとセロトニン>
 
脳内には、セロトニンを利用している神経細胞、すなわちセロトニン作動性ニューロンが存在します。このニューロンでセロトニンが利用されますと「5HIAA(5-ハイドロキシインドール酢酸)」という物質が生成されますので、脊髄液中の5HIAAを測定することで脳内セロトニンの利用率がわかります。凶悪な犯罪者では「5HIAA」が少ないことが知られていますので、脳内のセロトニンが少なく、セロトニン作動性ニューロンの働きが悪いと攻撃性が高まるのではないという報告があります。
 魚の油に含まれるDHAの血中濃度が低い人は「5HIAAが少ない傾向にある」ことが知られています。そこで富山医科薬科大学の浜崎智仁教授は、2ヶ月間に渡って医学部の学生にDHAを摂取してもらったところ、ストレスホルモンである「ノルアドレナリンの量が減少した」という結果が出ました。また2000年に開催された国際脂肪酸・脂質学会では、フィンランドの学者が「週に2回以上魚を食べない人は、そうでない人に比べ自殺企画率が高い」ことを発表し、魚の摂取はうつ病や自殺の予防になるのではないかといわれています。

<コレステロール値が低いと自殺しやすい>

 この問題は、3万人を対象にしたオランダでの調査によって明らかにされました。その理由として「コレステロール値と脳内セロトニン量は連動しており、コレステロール値が低い人は、脳内セロトニン量も少ない」としています。またフランスでは、1967〜72年の間に心臓・循環器の危険因子について調査が行われましたが、対象者のうち約5パーセントが1994年までに自殺しました。この自殺率はフランス国内平均の3倍という高率でしたが、特にコレステロール値が急降下した人に自殺が多いことが判明しました。

<亜鉛不足と暴力>
 
米国イリノイ州で行われた研究によれば、暴力行為で刑務所に収容された男性囚人は、一般の男性に比べて「血液中の亜鉛濃度が低い傾向にある」ということです。
 ストレスが加わると体内ではそれに対抗する物質が作られますが、その一つが肝臓で作られるメタロチオネインというたんぱく質。このたんぱく質は、ストレスに対する感受性を下げて、緊張や不安を和らげる働きがありますが、メタロチオネインの合成に欠かせないのが亜鉛です。亜鉛不足の結果、メタロチオネインの合成がうまくいかず、ストレスに対して過敏となっている可能性があり、最近の若者がキレやすくなったのも実は亜鉛不足が一因しているのかもしれません。

<キレる小学生が増加>
 
文部科学省の担当者は、小学校で校内暴力が増加している理由として、感情のコントロールがきかない子供が増加傾向にあり、忍耐力や自己表現力、人間関係を築く力が低下していることが原因と指摘しています。その一方で小児医療に携わる医師たちからは、「低血糖症も要因の一つ」という意見が出されています。
 低血糖とは「血液中の血糖値が低下してしまうこと」で、脳のエネルギー源であるブトウ糖が枯渇した状態が長く続くと、動機、貧血、無気力、めまい、頭痛、不安感、非社会的行動、集中力の欠如、うつといった症状が出てきます。さらに脳は低血糖状態を補うために、アドレナリンというホルモンを分泌して糖の分解を促進し血糖を維持しようとします。しかし、アドレナリンが過剰分泌されると、興奮状態になって攻撃的になってしまいます。大人でも、空腹状態になるとイライラして怒りっぽくなる現象と同じです。
 血糖値の特徴として、その値が急激に上昇すると下がるときもまた急激であること。ご飯などのでんぷん類は、血糖値をゆっくりと上昇させまず。しかし、炭酸飲料、スナック菓子類、ファストフード類の取り過ぎは、血糖値の上昇下降を急激にさせて、低血糖状態を作りやすくするというわけです。

<精神障害に良いハーブ>

 うつ病に良いハーブというと"西洋オトギリソウ"(セントジョーンズウォート)が最も有名です。ヨーロッパ原産オトギリソウ科の多年草植物で、有効成分のヒペリシンは「MAO(モノアミンオキシダーゼ)を阻害し、脳内セロトニン活性を高める作用がある」ことが知られています。このため「うつ状態を改善する」などの目的で使用され、軽度・中等度のうつ状態に対しては、ヒトでの有効性が示唆され、ドイツのコミッションE(ドイツの薬用植物の評価委員会)は、うつ状態に対する使用を承認していています。摂取の目安量は、抽出物として900mg/日ぐらい。
 注意点としては、薬物代謝酵素[チトクロムP450、特にサブタイプであるCYP3A4及びCYP1A2)]が誘導され、インジナビル(抗HIV薬)、ジゴキシン(強心薬)、シクロスポリン(免疫抑制薬)、テオフィリン(気管支拡張薬)、ワーファリン(血液凝固防止薬)、経口避妊薬などの薬の効果が減少する可能性があり、医薬品服用者は注意が必要です。またヒペリシンの多量摂取により、日光皮膚炎などの光過敏症を引き起こすことがあります。

 "バレリアン"(西洋カノコソウ)は、ヨーロッパ原産の多年草植物の一つです。その根は、1800年代中頃から北米及びヨーロッパで情緒不安や神経性睡眠障害の治療に広く使用され、「19世紀のバリウム」とも呼ばれていました。根から抽出したエキスは、バレレン酸または吉草酸を0.3%含有しており、400〜900mg(ハーブとして1.5〜3gに相当)を就寝前に摂取すると「睡眠の質を高める」ということで使用されています。コミッションE(ドイツの薬用植物の評価委員会)でも「不眠症」「精神不安」などに対する使用を承認しています。


◆  人の性格は何で決まるか

 ここまで話をすれば、もうお分かりかと思いますが、「人の性格は血液型では決まりません」。人の性格を決めているのは、セロトニンやノルアドレナリンといった脳内ホルモンや神経伝達物質です。各脳内ホルモンや神経伝達物質の分泌量には、かなりの個人差がありますので、それぞれのホルモン分泌の配合量、つまりブレンドの違いによって"100人100色の性格"が生まれます。例えば、βエンドルフィン、エンケファリン、ドーパミンは気分の高揚を、チロトロピンはやる気・意欲を、チロキシンは神経過敏・イライラ感を、アドレナリンは恐怖と不安を、ノルアドレナリンは怒りや攻撃性を、セロトニンは情緒の安定に働きます。
因みにアドレナリン対ノルアドレナリン比率ですが、攻撃性の強いライオンを1対1とした場合、ヒトやネズミは5対1、モルモットは10対1、ウサギは20対1と大人しい動物ほどアドレナリン比率が高くなっています。
 それぞれの脳内ホルモン(または神経伝達物質)のブレンド比率は、生まれつきの体質があり、親から子へと受け継がれていきますが、それだけではなく「食生活の違い」によっても変化し、また「幼少期の育てられ方」も強く影響し合います。特に近年では、親との関わりが犯罪者の性格形成にどう影響するのか、といった問題がクローズアップされています。今のところわかっているのは、「犯罪者の多くは、幼児期に家庭的に問題があり、特に母親よりも父親の愛情に恵まれないことが多い」ということ。例えば、ヒトラーは父親の3度目の結婚で出来た子供で、父親は酒乱で気に入らないことがあると子供を棒でたたくような生活破綻者であったことが知られています。

<血液型と性格>
 さて1970年代に「血液型による性格判断」が大流行しましたが、その考えのベースとなったネタ本が、実は存在します。昭和7年に三省堂から出版された『血液型と気質』という本で、著者は当時東京女子高等師範学校の教員であった古川竹二という人です。古川氏は、著書の中で「A型は内向的で温順、神経質の傾向」、「B型は気軽で社交的、あっさりした性格」、「O型は意志的で感情に動じない、落ち着いた性格」、「AB型は外面はB型、内面はA型的傾向」としています。
 今の「血液型による性格判断」と大変似ているように思いますが、なんて事はありません。古川氏の本をベースにして、1970年代に「血液型と性格」に関する本を書いた人がいて、それがマスコミに広まった……という訳です。

 心理学を専攻していると「血液型と性格は当たるのか?」といった質問と同じくらいよく聞かれる質問があります。
 昔、「3年目の浮気」というヒット曲がありましたが、それは「科学的に見て正しいのか?」という質問です。その答えは「正しい」と言えましょう。その鍵を握るのは"PEA"という脳内から分泌されるホルモンに秘密があります。
 PEAは男性の持つ男性ホルモンを、そして男性ホルモンはPEAを互いに刺激しあい高め合います。つまりPEAが分泌されると、男性ホルモンが多く分泌され、そのおかげで性欲が増したり、精子数が増加したりします。しかし残念なことに一緒に生活をして3年ぐらい経つとPEAが分泌されなくなってきます。これは、女性に対して性的な魅力を感じなくなった為とも考えられますが、その一方で家族としての心理的な満足感を示すエンドルフィンという別なホルモンの分泌が増加します。
 つまり3年ぐらい経つと恋愛感情から家族としての愛情へと変わっていくわけです。そういう意味では、結婚生活とは「2つの道を1つにし合って生きる二人三脚」、お遍路さんの言葉で言えば「同行二人」の人生とも言えるでしょう。


◆  セロトニンとは

 セロトニンは、アミノ酸の一種であるトリプトファンから合成される体内物質の一つで、その多くは腸運動のために小腸内で作られています。しかし、ここで取り上げる「我々の性格を司るセロトニン」は、体内の2%ほどの量で、脳内に分泌される神経伝達物質です。このセロトニンを放出するセロトニン神経は、脳幹の真ん中にある縫線核(ほうせんかく)に存在し、軸索を脳全体に伸ばしています。
 ストレスが続くと交感神経が過敏となり、アドレナリンやノルアドレナリンの分泌が高まります。セロトニンは過剰に分泌されたこれらのホルモンを抑制して、自律神経のバランスを整える働きも担っています。人間の感情の基本は、"快"と"不快"です。快を感じた時にはドーパミンが分泌され、不快を感じた時にはノルアドレナリンが分泌されます。どちらにしても過剰の分泌は問題ですので、この時、セロトニンが働いて過剰分泌にブレーキをかけます。仏教では「平常心」という言葉がありますが、心をニュートラルにして正常に保つのがセロトニンの働きです。従って、セロトニンが十分に分泌されないと抑うつやイライラ感が起こってきます。
 セロトニンが減少するとうつ病や自殺が増えるということは、今から30年近く前に発見されました。セロトニンはアミノ酸のトリプトファンから体内で合成されます。神経細胞から出て作用するとすぐにMAOという物質によって分解され、5-HIAAという分解物となります。セロトニン量を増やすには、セロトニン神経から放出されたセロトニンの取り込みを阻害することが必要で、1988年、その作用を持つ「SSRI」が米国の製薬会社イーライ・リリー社によって開発されました。
 面白いもので、サル山のサルを調べると「ボスザルの方が2番手のサルよりも血中のセロトニン濃度が高い」ことがわかってします。しかし、ボスザルが失脚するとセロトニン濃度が低下し、新しくボスザルになったサルのセロトニン濃度が高くなります。つまり「社会的地位がセロトニン濃度に影響する」わけで、芸能人でも政治家でも社会人でも社会的地位が上がると非常に元気になるのは、セロトニン濃度の変化が影響しているのかもしれません。
 厳密に言えば、セロトニンの受容体には1から7まで種類があります。セロトニン1A受容体にセロトニンが結合すると元気が出ますが、うつ病の場合はここに結合するセロトニン量が少ないことがわかっています。またセロトニン2A受容体にセロトニンが結合するとうつ状態となりますが、うつ病のある種の薬は2Aとセロトニンとの反応を阻害して改善へと導きます。更年期になるとエストロゲンの量が減ることが知られていますが、エストロゲンが減少するとセロトニン1A受容体の数が減ることがわかっています。女性が更年期やマタニティーブルーの時期にうつ病を引き起こしやすいのは、これらが関係しているのかもしれません。
 脳内セロトニン量が極めて少ないとうつ病になりますが、適度に少ないと衝動的、暴力的な行動を起こすことも知られています。従って、セロトニンが低下し始めた頃は、イライラや家庭内暴力となって現れ、さらに減少が進むとうつや引きこもりになる、といった今の若者やニートの行動につながるものがあります。
 スイスの製薬会社チバ・ガイギー社は、インド蛇木の根からレゼルピンという成分を抽出し、高血圧の薬を開発しました。しかし、投与された患者の1割から2割にうつ病が現れ、自殺者も出てきました。そこでレゼルピンを投与され自殺した患者の脳を調べてみたところ、ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンなどの脳内物質が非常に減少していることがわかりました。うつ病に有効なイミプラミンは、これらの脳内物質の再取り込みを阻害してうつ病を改善する働きがあります。

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◆  眠りのホルモン

 動物実験では、脳内でセロトニンの合成を阻害するような物質、例えばパラクロロフェニルアラニン(PCA)などを与えると、その動物は眠らなくなります。眠りには、レム睡眠とノンレム睡眠とがありますが、うつ病の特徴は「眠りに入ってすぐにレム睡眠になる」ということで、ノンレム睡眠が普通よりも少ない状態にあります。そこで薬などでセロトニンを増やしてやるとノンレム睡眠が増えてきて、不眠症が改善されます。
 人はなぜ眠くなるのでしょうか。それは、脳内に睡眠物質が増えて眠くなっているわけです。その代表がメラトニンというホルモンです。

 古代ギリシャ、ローマの時代、血液の元は腸で作られると考えられていました。これが肝臓に行き、さらに心臓に行って初めて血液となる。この血液が脳に行くと蒸気となり脳室に溜まるものと考えられていました。脳の真ん中には松果体というものがありますが、これは脳室から出る霊気が神経の管の中を通って全身に流れるのを調節する器官だと考えられていました。
 スズメなどの鳥は朝になるとさえずり始めますが、目を見えなくした鳥でも活動を始めることが知られています。これは鳥の頭蓋骨がわずかに光を通過させるためで、通過した光は松果体という場所で光を感知していることがわかりました。スズメの松果体を取り除いてしまうと、さえずり始める時間も活動する時間帯も昼夜バラバラになってしまいます。

 セロトニンは、光を浴びることで合成が高まりますが、暗くなると今度はセロトニンからアセチルセロトニンが作られ、さらに眠りのホルモンであるメラトニンが脳の松果体で作られます。メラトニンは、松果体から血液中に放出されるホルモンで「脳の体温を下げて眠りを誘発」します。また活性酸素の害を防ぐ抗酸化作用や成長ホルモンの生成を促進する働きも知られています。
 メラトニンは、明るい昼間にはほとんど血中にはなく、午後8時以降に血中濃度が上昇することが知られています。また分泌量は8歳前後がピークで、10歳を過ぎると減り始め、60歳以上ではほとんど産生されないため「メラトニンの減少が、思春期の引き金になっているのではないか」といった説もあります。  


◆  麻薬と人類

 人が幻覚を引き起こす植物に魅せられたのは、いつ頃なのでしょうか。ネアンデルタール人の墓に遺体と共に埋葬されていたのが、麻黄という植物です。エフェドリンという成分を含み気管支を拡張させるため、漢方では喘息に良いということで知られています。エフェドリンは交感神経に作用し、興奮をもたらします。
 1920年代、エフェドリンによく似た物質アンフェタミンが合成されました。当時、エフェドリンは喘息の薬でしたが、アメリカでは原材料のマオウの入手が困難なため、エフェドリンに変わるものを探していました。ゴードン・アレスは、エフェドリンによく似た形のアンフェタミンに注目し、1932年にはベンゼドリンという商品名で大衆薬としての販売がスタートしました。
 ある時、ナルコレプシーの治療薬としてアンフェタミンは使えないだろうか、と考えた医師がいました。早速治療に使ってみると効果がありましたが、やがて誇大妄想が表れるという報告が相次ぎました。1939年には、アンフェタミンを服用中の患者は「空腹を感じない」といった報告も出ました。この年のこと。ポーランドに侵攻したドイツ軍は、眠気覚ましと軍人の士気高揚を目的に兵士に使用し、アメリカやイギリス軍でも使用が始まりました。日本でもアンフェタミンを改良したメタンフェタミンが、大日本製薬から「ヒロポン」の名前で発売され、ヒロポンの注射用アンプルが神風特攻隊の兵士たちに配られたという歴史があります。
 アンフェタミン(ドーパミンの水酸基をなくした構造をしている)やメタンフェタミンは、ドーパミンやノルアドレナリンに構造がよく似ており、交感神経を高めて興奮をもたらす作用が知られています。

  インカ文明の人たちは、コカの葉を使用しました。コカはスペイン人によってヨーロッパへもたらされましたが、19世紀にはいるとウィーンの化学者ニーマンがコカの精製に成功し、これをコカインと名付けました。当時「コカインは、アヘンの依存症を治療する」という話に飛びついたのがフロイトで、彼は「コカインを用いれば、アヘンやアルコール中毒などの依存症もなくなるだろう」といった誤りを犯しました。結果的にコカイン自体に依存症があるため、使用すればアヘンやアル中は改善されても今度はコカイン中毒に陥ってしまいます。
 コカインには、ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンといった「モノアミンの再取り込みを阻害すること」で量を増やす働きがあり、その結果、呼吸数、心拍数、血圧を上昇させ、空腹感、うつ状態、疲労感を消失させます。

<幻覚と植物>
 中世では、人々の精神を変えてしまう術を持った女性を"魔女"と呼んで恐れました。彼女らは、特殊な植物に含まれる成分を人々に与え、幻覚などを引き起こす術を知っていたのです。例えば、ナス科の植物であるベラドンナで作った軟膏を棒に塗って女性の膣に差し込むと幻覚に襲われ、宙を飛ぶような錯覚に陥りました。そこでこの軟膏を塗った棒のことを「魔女の箒」と呼んだわけです。箒で空を飛べるわけがないと思うかもしれませんが、幻覚を起こして錯覚していたわけですからまんざらウソでもない訳です。
 ベラドンナには「アトロピン」という成分が含まれており、現在では脳に働いて幻覚を起こすことがわかっています。またアセチルコリン受容体と結合する働きがあるため、地下鉄サリン事件の際にサリン中毒の特効薬として使用されました。サリンはコリンエステラーゼを阻害しアセチルコリン作用を高めますが、アトロピンがアセチルコリン受容体と結合することで、その作用を低減します。タバコに含まれるニコチンにもアセチルコリン受容体に結合する作用があります。
 
  メキシコ原産のペヨーテサボテンには、ノルアドレナリンと構造が良く似た「メスカリン」という成分が含まれており、脳内でノルアドレナリン受容体と結合して空中浮遊などの幻覚を起こさせます。
 統合失調症の発症原因として、「ドーパミンの過剰によって起こる」とする"ドーパミン仮説"があります。パーキンソン病は、大脳にある黒質細胞が死滅してしまう病気であり、これにより脳内ドーパミン量が減ってしまいます。治療薬としては脳内でドーパミンに変化するL-ドーパが使用されますが、やがて進行と共にドーパミン神経が死滅するとL-ドーパのドーパミンへの変換が出来なくなります。そこでL-ドーパの投与量を増やすわけですが、この結果、患者に幻覚や偏執といった統合失調症のような症状が出てきます。
 
  ウクライナ地方や東欧南部では、麦角菌が発生したライ麦を食べて手足、鼻などが壊死するといった病気が古くから知られていました。これは、末梢血管が収縮するために起こるものですが、同時に幻覚やてんかんのような発作に見舞われることもありました。当時、このような異常行動は魔女の仕業とされ、魔女狩りの対象にされましたが、麦角菌は長期に保存された古いライ麦に繁殖するため、新しい麦を買うことが出来ない貧しい人たちにこの病気は蔓延しました。
 1943年のこと。スイスの化学者が麦角菌に含まれる成分の研究から一つの化合物を合成し「LSD」と名付けられました。開発者の一人ホフマンは、LSDの入った缶のフタを開けて臭いをかいだところ、突然幻覚と動悸に見舞われました。さらにごく少量飲んでみたところ、周りの風景はゆがみ、鮮やかな色や光が現れては消えていったといいます。1960年代には、アメリカの若者を中心にLSDを飲んで幻覚に酔いしれることが流行。ビートルズなどもLSDを飲んで曲を作曲したことがある、と証言して話題となりました。
 LSDは、セロトニンの再吸収レセプターに結合する作用があり、これによりセロトニンの放出を抑制します。その結果、ドーパミンの放出が増加して幻覚や興奮作用をもたらします。

  インカ文明の人たちに使用されたコカインには、ドーパミンの再取り込みを阻害する働きがあるため、ドーパミンが長くシナプス間隙に存在することで幻覚症状をもたらすことがわかっています。またアンフェタミンにはドーパミンを神経末端から放出される作用があり、アルコールやマリファナには側座核といった快感領域のドーパミン量を増やす働きが知られています。
 タバコの葉には2〜8%ものニコチンが含まれていますが、ニコチンはドーパミンやアセチルコリンに似た分子構造をしており、アセチルコリンをトランスミッターとするニューロンを興奮させます。その結果、脳の活性を高めたり、自律神経に働いて血圧などを上げる作用があります。
 昔から興奮作用があるものにカフェインが知られています。脳内にはアデノシンという窒素化合物を伝達物質としている神経があり、アデノシンはドーパミンやノルアドレナリンといった興奮物質の放出を抑え、鎮静効果をもたらします。しかし、カフェインにはこのアデノシンの作用を阻害する働きがあるため、脳が覚醒化して眠気を覚ますなどの作用をもたらします。


◆  男性と女性の違い

 男性と女性では、身体的にも精神的にも違いがあります。その違いのことを"性差"といいますが、性差を決めている要因の一つにホルモンがあります。
 まず男か女かは、遺伝子で決まります。しかし、それだけでは男女差は出てきません。妊娠中、男の胎児は妊娠4〜5ヶ月目頃から精巣より男性ホルモンであるアンドロゲンを分泌し、ペニスなどの性器を発達させます。一方、女の胎児はアンドロゲンがないため、女性器になります。さらにアンドロゲンは脳にも作用し、男性らしい脳を作ります。もしアンドロゲンが脳に作用しなければ、身体は男でも思考は女性の脳(例えば、同姓を好きになるとか)になってしまいます。ラットの実験でも、オスのラットを去勢しアンドロゲンの分泌を止めると、メスラット特有の性行動を起こすことが知られています。
 一方、女の胎児に副腎アンドロゲンの異常分泌が起こると男の子のようなオテンバ娘になる、と言われています。サルの実験でも、妊娠中のメスザルにアンドロゲンを注射しておくと、生まれてきたメスザルの行動パターンがオス型になることが知られています。

 妊娠中のホルモン分泌が、男らしさ女らしさに影響を与える。このことは、第二次世界大戦というストレス下にさらされた状況で生まれた男女に同性愛者が多いというドイツでの研究報告に通じるものがあります。つまり妊婦が妊娠中に強いストレスにさらされると、ホルモン分泌に異常をきたし、それが性差に影響を与えるということです。男性諸君、妊娠中の女性はいたわりませう。

(離婚遺伝子は存在する)
 スウェーデン・カロリンスカ研究所や米国エール大などの研究チームは、ハタネズミ類の夫婦関係(一夫一婦制)を左右する遺伝子がヒトにもあり、男性ではこの遺伝子が特定タイプの場合、そうでない場合に比べて「離婚や別離の危機を経験する確率が2倍高い」ことが分かりました。
 この遺伝子とは、「AVPR1A」というもので、脳神経において神経伝達物質であるアルギニン・バソプレシン(AVP)を受け取るたんぱく質(受容体)を生み出す機能があるもの。ハタネズミ類ではAVPが多かったり、受容体がよく働くタイプだと、社会性が高く一夫一婦制を好むようになることが確認されており、ヒトでは自閉症の発症リスクに影響する可能性が示唆されています。
 研究チームは、パートナーがいるスウェーデン人男性約900人を対象に、2本ある12番染色体中のこの遺伝子におけるDNA塩基配列が特定のタイプかどうかを調査したところ、2本とも特定タイプの男性が「過去1年に離婚や別離の危機を経験した割合は34%」と、2本ともそうでない場合(15%)の約2倍であることがわかりました。

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◆  香りが心に作用する

 食べ物には「栄養素」以外にも「味」や「香り」という要素があります。中でも食べ物が放出する香りが、脳を刺激してα波やβ波を発生させることで、人の自律神経に強い影響を与えることがあります。またその原理を応用したものが"アロマテラピー"です。
 脳波について簡単に説明しますと、γ波というのは30ヘルツ以上の波で「強い不安を感じたり、興奮している時」に現れます。β波は25〜14ヘルツの波で「やや緊張した状態、軽いストレス状態の時」に現れます。α波は13〜8ヘルツの波で「静かで落ち着いた状態、リラックスした時」に現れます。θ波は7〜4ヘルツの波で「深いリラックス状態、入眠時のうつらうつらした時など」に現れます。δ波は3.5ヘルツ以下の波で「熟睡している時」に現れます。
 脳波と自律神経系には密接な関係があり、α波やθ波が多く出ている時は副交感神経が、β波が多い時は交感神経が高まっている状態です。リラックス効果があるというラベンダーやカモミールの匂いを嗅ぐと、α波が多く発生して副交感神経が高まります。またラベンダーに含まれる酢酸リナリルの香りは、脳の縫線核を刺激してセロトニンの分泌を高め、ペパーミントに含まれるメンソールの香りは、脳の青斑核を刺激してノルアドレナリンの分泌を高めることがわかっています。その他、レモンの香りにはIgAという抗体を増やす働き、ペパーミントの香りには集中力を高める働き、フェンネルの香りは食欲を増加させる働きが知られています。

 歴史的には、香りは時として、異性を引き付けたり自分を高貴に見せたりする手段に用いられました。クレオパトラは、バラやジャスミンの花を浮かべた風呂に入り、ジャコウやシベットの香水を付けていました。マリー・アントワネットは、バラ、コエンドロ、ラベンダーなどの匂い袋を携帯し、風呂には香水や花びらの他、イチゴを磨り潰して入れたこともあったといいます。楊貴妃は、丁子、ジャコウ、桂皮などを混ぜた香薬を毎日飲み、口臭予防に丁子を噛んでいました。
 人ばかりでなく、動物も臭いに反応します。メスネコが興奮するというマタタビの臭いは、発情したオスネコの尿の臭いに似ているためで、トラやライオンなどネコ科の動物は同様の行動を取ります。またキウイフルーツの匂いにも多少反応します。
 トリュフには多量のフェロモンが含まれており、ブタが交尾する時に出す臭いに似ています。『グリム童話』に登場するハーメルンの笛吹き男は、ネズミが好きなバレリアンの根を乾燥させたものを携帯していたため、ネズミがその臭いに誘われてついていったというわけです。
 イヌは人の100万倍の臭覚を持つと言います。逆に言えば、人の臭覚はそれだけ退化してしまっているわけですが、盲目で渡来した鑑真和上は、漢方薬を鼻と舌で識別し間違えることはなかったといいます。またヘレン・ケラーは友人を匂いで識別しました。ある時、「パリの匂いは」と聞かれ、『香水と白粉と酒と煙草が調和したもの』と答えたエピソードが残っています。

(香りの雑学)
ネコが体をなめるわけ→体臭を消し、狩りの準備をするため。ワニが口を開けるわけ→臭覚で獲物を探すため。タコが墨を吐くわけ→天敵のウツボの臭覚を混乱させるため。象が涙を流すわけ→涙ではなく発情期のフェロモンのようなもので、求愛の行為。蚊が人に近づくわけ→汗の臭いを感じて刺しにくる。カンガルーの赤ちゃんが母親の袋に入れるわけ→育児袋から発するアポクリン腺に導かれるため。マサキの花が臭いわけ→魚臭を放ち、ハエを寄せ付けるため。ネコがマタタビに酔うわけ→ラクトンという成分が発情したオスネコの尿の臭いに似ており、興奮するため。ブタがトリュフを探せるわけ→ブタが交尾する時に出るフェロモンの臭いがするため。ハーメルンの笛吹き男がネズミを引き連れていったわけ→ネズミの好きなバレリアンの根を持ち歩いていたため。ヘレン・ケラーが友人を識別できたわけ→実は、匂いで識別していた。

(蚊に刺されやすい人とは)
 蚊は、人の呼気に含まれる二酸化炭素や汗に含まれる乳酸に反応して近づき吸血します。このため蚊を近付けやすくする誘引は、運動、飲酒、入浴後などで、特に多量の汗をかいたときなどが危ないといえます。
 蚊に刺されやすい人と刺されにくい人が存在する、これは事実のようです。蚊の吸血は、卵の成長に必要なタンパク質を動物の血液で補給するのが目的のため、メスの蚊しか吸血しませんが、血液型でいうと「比較的O型を好み、次にB型、AB型と続き、A型になると若干嫌う傾向」があります。これは、血液中の抗原物質の味がそれぞれ異なるため。抗原物質は人によって汗や涙、唾液にも含まれるので、蚊がそれを感知し、刺す前に吸血の可否を判断しているともいえます。


◆   夢の解釈

 
果たして夢には、重大な意味が込められているのか?。これについては、未だ結論は出ていませんが、少なくとも夢の内容には3つのパターンがあることが知られています。

1、夢は心理状態の表れ
 古代ギリシャの哲学者プラトンは、「夢は無意識の願望の表れ」と主張しましたが、それを継承したのがオーストリアの精神分析学者フロイトで、「夢は願望充足の表れであり、どんな夢にも前日の諸体験への結びつきが見られる。また社会的に許されないものは、時に修正され(夢の検閲)、また省略や変形された形を取る(夢の圧縮)」と解釈しました。戦時中、食糧難の時代には「食べ物に関する夢」が多かった事例などが一例として挙げられます。

2、夢は身体状態の表れ
 夢は、その人の心理状態ばかりでなく「身体状態」が見え隠れしていることもあります。古代ギリシャの哲学者アリストテレスは「夢は病気の早期発見に役立つ」と述べ、医師であったヒポクラテスは、その理論を実践に応用しました。一例として、耳鳴りの持病を持つ人は「滝の音」の夢をよく見るなど。フロイトの『夢判断』の中には、肺結核の人は必死になって逃げる夢、呼吸が苦しくなる夢を。胃腸の悪い人は物を食べたり、吐いたりする夢をよく見ると書かれています。またロシアの医師カサツキンは、1975年に『夢の理論』を出版。本の中で「ある学生がニシキヘビに巻かれる夢を見た1年後、脊椎の腫瘍が見つかった例や結核の女性が土に埋もれる夢を見た話」などを紹介し、夢は病気の診断に役立つことを主張しました。

3、夢は未来の予知の表れ
 夢の中には"正夢"とも解釈できるような例も多く存在します。古代エジプトでは「夢は神からの啓示」とされ、"生命の家"と呼ばれる学校で訓練を受けた占い師が存在しました。古代ギリシャの預言者アルテミドロスは「頭を剃られた夢は凶で、船乗りならば難破、病人ならば重大な衰弱を意味する」などと書かれた本を出版。これは中世になって翻訳され、ノストラダムスにも大きな影響を与えたといわれています。
 日本では、徳川家康の初夢好きが知られており、家臣の下女が初夢で「富士の頂上で笠をかぶり、蓑を着て粥を食べる夢」を見たことを知り、それを50石で買い取った話や狩野派の画家に「七福神の絵」を描かせた話、「一富士、二鷹、三なすび」にちなんだエピソードなどが伝えられています。

正夢の話
(リンカーンの暗殺)
 「ホワイトハウスを歩いていると人々のすすり泣く声がする。行ってみると白布に包まれた死体があり、兵士に尋ねると『閣下が暗殺されました』と言った」。そんな夢を見たとリンカーンが友人のラモンに話をした。それから数日後にフォード劇場で暗殺された。
(フェルディナンドの暗殺)
 オーストリアの皇太子フランツ・フェルディナンドの家庭教師であったヨゼフ・ラニー司教は、「サラエボで車に乗っているところを皇太子が撃たれて死んだ夢」を見た。そして、その日にサラエボ事件が起こった。
(タイタニック号の沈没)
 1912年4月14日、イギリスの豪華客船タイタニック号が、北大西洋ニューファンドランド沖合で氷山に激突して沈没。J・ミッドレイトンという人が、出航10日前に沈没の夢を見て乗船を取り消していたことがわかった。  


◆  心と栄養素

DHAとセロトニン
 脳内には、セロトニンを利用している神経細胞、すなわちセロトニン作動性ニューロンが存在します。このニューロンでセロトニンが利用されますと「5HIAA(5-ハイドロキシインドール酢酸)」という物質が生成されますので、脊髄液中の5HIAAを測定することで脳内セロトニンの利用率がわかります。凶悪な犯罪者では「5HIAA」が少ないことが知られていますので、脳内のセロトニンが少なく、セロトニン作動性ニューロンの働きが悪いと攻撃性が高まるのではないという報告があります。
 魚の油に含まれるDHAの血中濃度が低い人は「5HIAAが少ない傾向にある」ことが知られています。そこで富山医科薬科大学の浜崎智仁教授は、2ヶ月間に渡って医学部の学生にDHAを摂取してもらったところ、ストレスホルモンである「ノルアドレナリンの量が減少した」という結果が出ました。また2000年に開催された国際脂肪酸・脂質学会では、フィンランドの学者が「週に2回以上魚を食べない人は、そうでない人に比べ自殺企画率が高い」ことを発表し、魚の摂取はうつ病や自殺の予防になるのではないかといわれています。

うつ病とセントジョーンズワート
 ストレスに良いとされるサプリメントの一つにセントジョーンズワートがあります。セントジョーンズワートに含まれるハイパーフォリンには、シナプスから放出されたセロトニンが「再び同じシナプスに取り込まれるのを防ぐ働き」があります。またヒペリシンは、セロトニンを分解する酵素である「MAOの活性を阻害する働き」があり、これらの成分がシナプス間のセロトニン濃度の低下を抑えて、うつ病などの改善に効果をもたらすと考えられています。
 ドイツではうつ病の他、自律神経失調症や情緒不安の医薬品として使用されていますが、医薬品としては「ヒペリシン類を0.3%」含有しているものが使用されていますので、健康食品として購入する際も「ヒペリシン類0.3%含有で、1日の目安量300〜900mg」を参考にして下さい。ただし、効果は緩やかで、医薬品のような即効性は期待出来ませんのでご注意を。

亜鉛不足と暴力
 米国イリノイ州で行われた研究によれば、暴力行為で刑務所に収容された男性囚人は、一般の男性に比べて「血液中の亜鉛濃度が低い傾向にある」ということです。
 ストレスが加わると体内ではそれに対抗する物質が作られますが、その一つが肝臓で作られるメタロチオネインというたんぱく質。このたんぱく質は、ストレスに対する感受性を下げて、緊張や不安を和らげる働きがありますが、メタロチオネインの合成に欠かせないのが亜鉛です。亜鉛不足の結果、メタロチオネインの合成がうまくいかず、ストレスに対して過敏となっている可能性があり、最近の若者がキレやすくなったのも実は亜鉛不足が一因しているのかもしれません。

ドーパミンと過食行動
 遺伝子が「過食や体重増加を招く一因」である可能性が、新しい研究によって示唆されました。アメリカの科学誌「Science」2008年10月17日号で発表された「ドーパミンを利用して食物に対する脳の反応を調べた研究」によれば、食事を摂ると脳の"報酬(reward)"中枢細胞はドーパミンを放出し、快感を引き起こします。これまでの研究では、脳内のドーパミン受容体が少ない人は、他の人と同じ満足感を得るためにより多量に食べる人がいることが報告されていました。
 今回、米国オレゴン研究所では、エール大学およびテキサス大学の研究者とともに、女性の脳の快感中枢のスキャンを実施。その結果、一部の女性の脳ではドーパミン反応が低いことが示されました。また特定のドーパミンD2受容体遺伝子を持つ女性は、ミルクセーキを飲んだときの快感反応が低く、同じ快感反応を得るにはより多くのミルクセーキが必要でした。さらに追跡調査では、これらの女性がその後、過体重になる確率が高いことも示されました。

肥満の原因にドーパミン
 高カロリーの食べ物を際限なく食べ続けてしまう肥満者の脳では、コカインやヘロインなど「麻薬中毒患者と共通した変化が起きている可能性が高い」ことが、米国スクリプス研究所の研究チームにより発表されました。
 肥満者の脳では、意思決定などの機能を担う線条体の神経細胞内で、神経伝達物質であるドーパミンを受け取るD2受容体の働きが低下し、満足感が足りなくなると考えられます。これまで長期的な肥満傾向がある人と麻薬中毒患者では、そのことが指摘されてきました。
 肥満の治療は食事制限と運動が基本ですが、今後は「ドーパミンD2受容体の働きを回復させる」効果的な治療法や新薬の開発が期待されるところです。

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◆  脳の病気

統合失調症と脳
 藤田保健衛生大の宮川剛教授らは、統合失調症に似た異常行動を示すマウスの脳の中に未成熟な領域があることを発見し、英国の科学誌「モレキュラー・ブレイン」に発表しました。
 宮川教授らは、さまざまな遺伝子を欠損させたマウスの行動を調べたところ、「CaMK2αと呼ばれる酵素を欠いたマウスは、"気分の波"などの統合失調症に似た異常行動を起こす」ことを発見しました。この酵素を欠くマウスは、記憶を司る「海馬にある歯状回という領域の神経細胞が未成熟」で、ほとんど機能していないということです。死亡したヒトの脳を調べたところ、やはり統合失調症の患者は「歯状回の成熟した神経細胞を示す分子が少ない傾向」にあるそうです。宮川教授は、「ヒトの統合失調症の一部は、海馬の歯状回の未成熟が原因の可能性がある。成熟を促すことができれば治療法として有望だ」と語っています。

統合失調症と遺伝子
 統合失調症は100人に1人が発症するといわれ、日本には約200万人の患者がいます。また両親のどちらかに症状がある場合の発症率は10〜12%で、両親共に症状があると48%と高くなるため、遺伝的要因が8割という意見もあります。
治療には、ドーパミンなどの神経伝達物質の働きを抑える抗精神薬が使われ、症状改善に効果があることが知られていますが、発症の詳しいメカニズムは解明されておらず、根本的な治療法がないのが現状です。
 アイルランドのバイオ企業を中心としたチームと米国マサチューセッツ工科大などのチームが、統合失調症患者のゲノムを調べたところ、遺伝情報を記した塩基の並びから、1番と15番染色体の特定の場所に塩基の大規模な欠落や重複があることを見つけました。これだけでは、病気の全容解明と治療法の開発にはまだ至りませんが、発症の原因究明に一石を投じたことは否めません。今後の研究が待たれるところです。  


◆  天国と地獄

 植物の中には、アルカロイドなどの毒性物質を含むものがあり、それを食した結果、幻覚などを引き起こすことがあります。幻覚にも恐ろしい幻覚と夢を見るような幻覚とがあり、前者を「bad trip」、後者を「good trip」などと呼んでいます。
 Bad tripの代表格は、ベラドンナでしょうか。中世の魔女と称する人たちは、ベラドンナにトリカブトやコウモリの血、トカゲの舌などを鍋に入れて煮込んだものを飲んでいました。ベラドンナによって引き起こされる幻覚は、地獄へ行って悪魔に出会うような恐ろしいものが多いといわれています。ベラドンナに似た作用を持つ植物に、ハシリドコロがあります。江戸時代の医師・土生玄碩は、シーボルトからベラドンナが日本にもあることを教わりましたが、後に彼が尾張の国で発見したのはハシリドコロでした。チョウセンアサガオの種は、10粒も飲むとその毒性により死亡します。命に別状が無い程度の量だと、スコポラミンやアトロピンなどのアルカロイドによって恐ろしい幻覚を引き起こします。
 一方、Good tripの代表格では、ベニテングダケがあります。ほんのわずか口にすると夢を見るような酩酊感、原色のような鮮やかな夢を見るといわれており、奈良県には夢見村という名前が付けられた地名もあるそうです。メキシコインディアンが儀式に使うペヨーテサボテンやインドのヨガ僧が修行の時に吸う大麻は、空中を飛行するような幻覚を引き起こします。修験道の開祖・役の行者が空中浮遊したという話は、単なる幻覚だったのでしょうか。アマゾン原産のヨポ、ヤヘイといった植物、またメキシコ原産のモーニンググローリーなどは、LSDに近い幻覚を引き起こします。
 人が生死にかかわるような大きな事故や怪我をした時、その痛みを緩和させるために脳内にエンドルフィン、エンケファリンといったモルヒネ様物質が発生するといわれており、死から生還した患者が幻覚体験を口にするのは、そのせいではないかとも……。多くの学者は、臨死体験は脳内モルヒネ様物質によって引き起こされる幻覚であり、死後の世界は存在しないと主張します。しかし、私は臨死で体験する世界と死後の世界とは「似て非なるもの」と考えています。
 以前、ある物理学者が人工的に作った火の玉をテレビで公開し、話題となったことがありました。火の玉は「自然界が引き起こすプラズマ現象の一つ」であると学者は言います。しかし、私は人工的な火の玉と実際の人魂とは、やはり「似て非なるもの」だと考えます。
 それは、私が中学3年生の10月末の夜のことでした。その日は、裏の家でお葬式があった日でした。時間は午後8時50分くらい。当時、私の勉強部屋は家の2階にあり、受験勉強で疲れた私は、一休みしようと思い、部屋の窓を開けて深呼吸しました。すると……目の前に飛び込んできたのは火の玉。自宅の1階の屋根の上、3メートルぐらいのところを裏の家の方角に向かって飛んでいました。火の玉といっても、物理学者が作り出したものや時代劇で見るものとは、まったく似て非なるものでした。大きさは、バレーボールぐらい。まるでバレーボールにガソリンを撒いて、それに火をつけたような感じです。飛び方も直前ではなく、ジェットコースターのような軌跡を描きました。しかも登るときはゆっくりで、下るときは勢いがついてスピードがあり、ハレー彗星のように火の尾を引きます。そんな上り下りを5回ほど繰り返すと、火の玉は突然目の前から消えました。目撃した瞬間は唖然呆然状態でしたが、パッと消えた瞬間、ソゾクゾクッと背中に寒気が走ったのを覚えています。私は驚いて、2階の階段を駆け下りて1階に行きました。すると母親がやはり驚いた顔で、トイレから出てくるではありませんか。母親は、トイレの小窓から火の玉を見た、と言いました。目撃者は2人だけかと思っていましたが、翌日のこと。仕事帰りの男性が同じ時間に我が家の前を通り過ぎた際、家の屋根の上を「火の玉が通っていった」と母親に言って帰ったとのことでした。あの情景は、今でもはっきりと脳裏に焼きついています。ただ残念なのは、目撃したのは一度きりで、死ぬ前にもう一度見てみたいと思っています。


◆  脳の働き

数学に強い脳とは
 一般に「左脳は言語や数字などの論理的思考」、「右脳は映像、芸術など感覚的発想」を司るといわれています。従って「数字に強い人」とは、左脳の前頭葉という部分が発達している人ともいえます。
 左脳型の人は、言葉で説明することや理屈を重んじるため、最後まで納得しないと決断することができず、行動に移るまでに時間がかかります。一方、右脳型はひらめきや直感力に長けており、決断が早いのが特徴です。
 脳は、最初は新しいものに対して拒否反応を示すように出来ています。これは、新しいもの、すなわち未知のものに対して警戒するという防御機能があるからです。具体的には、右脳前頭葉が警戒反応を示します。「さあやるぞ」と意気込んで数字に取り組もうとしても多くの人は、ここで挫折してしまうのです。
 しかし、同じ刺激が続くと慣れてきて、拒否感が薄れて恐怖感を克服することが出来ます。この段階になると、対象に親しみを覚え、情報は左脳前頭葉で処理されるようになっています。日本人は比較的左脳型の人が多く、映像や芸術、直感に強い右脳型が少ないと言われています。数字を覚えたり計算したりという受験レベルでは、左脳の能力が大きく関係しますが、数学者や将棋のプロ棋士など「天才」レベルになると、左脳だけでなく、ひらめきやセンスなど右脳的な能力も求められます。天才レベルになると、論理を組み立てて答えを導き出すのではなく、パッと見ただけで瞬時に答えがひらめくと言われているからです。 

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